大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和24年(控)1159号 判決 1950年3月27日

被告人

宇野末治郞

主文

原判決を破棄する。

本件を岐阜地方裁判所大垣支部に差し戻す。

理由

職権を以て、原判決の理由の当否に付いて調査すると、原判決は其の理由中に於て、被告人は米の生産者であるが、昭和二十四年一月十八日頃海津郡海西村野寺の自宅に於て法定の除外事由なく、営利の目的を以て政府以外の者である平松かずゑに対し精米一斗及精米三升大内はつに対し精米一斗五升、角谷よねに対し精米三升及精米一斗合計四斗三升を統制額を五千二百四十六円四十一銭超過した代金六千九百二十九圓で賣渡したものである旨判示し、之が物價統制令第三條第三十三條昭和二十三年十月二日物價庁農林省告示第九号刑法第四十五條等に該当する旨説示して居る。併し乍ら本件の如き併合罪を構成する数個の統制額超過取引行爲を判示するには、其の各個の取引行爲に付、之が営利の目的に出でたものであることの外、其の取引の日時、場所、取引物件名同取引数量、及之れが所定統制額並同統制額を超えた取引代金額等を明示する方法により、其の取引の内容を逐一具体的に判示し、一の行爲を他の行爲と區別し得ると同時に、同各個の行爲が夫々所定統制額を超えて爲されたものであることを知り得る程度に特定し、以て尠くとも各個の行爲に対し法令を適用するに妨げなき限度に判示することを要するものと謂わなければならぬ。今之を原判決に付いて観ると、数個の統制額超過取引行爲に関する所定統制額を超えた各代金額に付、之を一括して其の統制額を超えた総金額及代金総額を説示するに止るが故に、未だ之のみに依つては、果して各個の判示行爲が夫々其の所定統制額を超えて爲されたものであるか否かを知り難く、延いては同各個の行爲に対し夫々法令を適用すべき基礎を看取し得ないのである。然らば原判決の判示は、判決に理由を附しない違法あるを免れ得ない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例